電気自動車(EV)の軽自動車が発売されて、EV普及が本格的に進むと言われていますが、本当でしょうか?どのような状況になっているのでしょうか?
軽自動車のEV発売は大きな反響を巻き起こし、急速に販売台数を伸ばしています。これによって、日本国内のEV普及は確実に前進しています。
これまでなかなか普及が進んでこなかったEVですが、ここにきてかつてない勢いで販売台数を伸ばしています。政府も2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2035年までに乗用車新車販売で電動車100%を目指しており、自動車業界全体でのEV開発の動きも加速しています。
EV100%に向けた世界の動き
欧州連合(EU)は2022年10月、2035年にガソリン車の販売を事実上禁止することで合意しました。英国はガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年に禁止するとしており、米国カリフォルニア州やニューヨーク州は2035年までにガソリンのみで駆動する新車の販売を禁止するなど、脱炭素化に向けて「脱ガソリン」は世界的な潮流となっており、日本でもEV化を加速することが避けられなくなっています。
国内自動車メーカーも取り組みを加速
日産自動車は、車両の電動化を加速するために5年間で2兆円の投資を行うとし、2030年度までに15車種のEVを含む23車種の新型電動車を導入するとしています。2022年3月にクロスオーバーEV、日産「アリア」を発売。6月には日産自動車と三菱自動車が共同開発した軽自動車のEV、日産「サクラ」と三菱「eKクロス EV」が登場しました。
トヨタも、2030年までに30車種のEVを展開するとし、2022年5月に新型EV「bZ4X」を発売。2030年に欧州で販売する「レクサス」をすべてEVにするとしています。
ホンダは、2030年度までにEVやソフトウエアに5兆円投資し、世界で30車種のEVを揃え、40年には新車をすべてEVか燃料電池車にし、ガソリン車から撤退する方針です。
自動車業界以外でも、2022年にソニーグループがEV事業へ参入し、9月にホンダと協業した「ソニー・ホンダモビリティ」を設立。2023年1月に「AFEELA」のプロトタイプを発表しました。量産車については2025年に投入が見込まれており、EV事業への取り組みが本格化しています。
圧倒的な人気の軽自動車のEV
2022年のEV(軽自動車は除く)の国内販売台数は約3万1600台で、その伸び率は150%に迫る勢いです。これに軽自動車も含めると5万8000台を超え、前年比2.7倍となっています。特に、日産「サクラ」と三菱「eKクロス EV」の累計販売は約2万台を超え、発売から4カ月で受注は計3万6000台を超えたといいます。2021年に日本で販売されたEVの合計は2万1139台。その約1.5倍以上をわずか4カ月で受注したことになり、その人気の高さがうかがえます。
軽EVが支持される理由
EVは一般的に充電に時間がかかり、1充電あたりの航続距離も課題とされていて、大型のバッテリーを搭載することでこの課題をクリアする一方、その分、価格も高くなっています。日産「リーフe+G」の60kWhバッテリー搭載車の航続距離は450km以上、価格は500万円以上ですが、「サクラ」と「eKクロス EV」の航続距離は最大180kmで、価格は240万円以下。軽自動車ユーザーの約半数は1日の走行距離が30km以内といい、180kmも問題なく、5日に1回の充電、しかも自宅での普通充電で対応が可能です。購入の際には経済産業省「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」も適用されます。
軽EVはリーズナブルな価格で購入のハードルを下げ、EV普及の可能性を高めたといえます。それだけでなく、ガソリンスタンドの減少や将来的な公共交通などの衰退も予想される中、軽EVの普及は高齢者をはじめ多くの人の移動の自由を担保するとともに、社会的課題解決への可能性を示すものと期待されているのです。
広報紙「MiRaI」Vol.78 2023 春号 より転載