現場からの電気事故・ヒヤリハット報告―経験から学ぶ電気管理の極意―
ELECTRIC ACCIDENT発刊にあたって
自家用電気設備の保守・管理に携わる電気主任技術者は、設備の保守・管理の職務を誠実に履行している。しかし、関東東北産業保安監督部内で見ても、年間100件以上の波及事故が発生している。また、感電事故も20件近くにのぼっている。これらの波及事故・感電事故に関しては毎年、関東東北産業保安監督部で詳細な報告がなされている。公益社団法人東京電気管理技術者協会においても、協会に所属する会員の顧客で発生した波及事故・感電事故に関し、報告・分析がなされている。
波及事故・感電事故については経済産業省に報告する義務があり、全件把握されているが、波及事故に至らない電気事故、電気事故に至らないヒヤリハットについては統計が取られておらず、個別の講習会等で事例が紹介されているのみといった状況である。
そこで、本協会において、波及事故、波及事故に至らない電気事故およびヒヤリハットの事例を集め、それらの原因と対策をまとめる形で本書を発刊した。
編集にあたっては、ヒヤリハット・事故・波及事故の要因を外部要因、内部要因、人的要因に大別し、その中で電気の流れに沿って、PAS・UGS・MDS→高圧ケーブル→DS→高圧用計器→遮断器→変圧器・コンデンサ・リアクトル→試験→低圧機器の順に並べた。
これらの情報は正直なところ表に出したくないものであるが、快く提供していただいた電気管理技術者の方々に謝意を表したい。
広く公表することにより本協会会員のみならず、全国の電気管理技術者の一助になることを切望し、ひいては波及事故・感電事故が無くなることを期待したい。
一人ひとりの電気事故・ヒヤリハット件数は決して多くはなく、そこから得られる教訓は少ないかもしれないが、数多くの事例を知り疑似体験することで事前の対策を講じることができ、日々の業務を行っていくうえで事故防止につながるものと確信している。
2017年3月
公益社団法人 東京電気管理技術者協会
会長 今田 俊雄