再生可能エネルギーで注目されるものに「揚水発電」があると聞きました。揚水発電とはどんな発電で、水力発電とどう違うのでしょうか。
水を汲み上げ、その水を落下させることで発電するのが「揚水発電」。水の持つ位置エネルギーを利用して、落水や流水により発電するのが「水力発電」です。
再生可能エネルギーというと太陽光発電や風力発電を思い浮かべますが、最近、「揚水発電」がにわかに注目されています。水資源に恵まれた日本で、天候に左右されない再生可能エネルギーとして、「水力発電」とともに「揚水発電」に期待が集まっているのです。
「揚水発電」とは



「水力発電」は、流水や落水による水の位置エネルギーを水車の回転に利用して発電する方法です。
一方、「揚水発電」は、水を汲み上げ、その水を落下させることで発電します。水力発電と違うのはまず高い場所へ水を「汲み上げる」という点です。
発電所の上部と下部に貯水池をつくり、昼間の電力需要の多いときは上の貯水池から下の貯水池に水を落として発電し、発電に使った水は下部の貯水池に溜めておきます。夜間は余剰電力を使って下の貯水池に溜まった水を上の貯水池に汲み上げ、翌日、その水を落下させてまた発電します。
揚水発電の役割
揚水発電は、「カーボンニュートラルの実現」と「電力供給の安定」という2つの目標を達成するために大きな役割を担っています。
太陽光発電や風力発電による再生可能エネルギーは、発電量が天候に左右されます。電力は需給バランスが取れている必要があるので、発電量の増減をカバーする調整力が必要ですが、その調整力となるのが揚水発電です。
太陽光などの発電量(供給量)が必要以上に多くなった場合、余剰電力で水を汲み上げることで電気の需要を増やし、発電量が足りなくなった時、汲み上げた水で発電します。また、電力需要が低い夜間に水を汲み上げ、昼間の需要ピーク時に稼働して電気を供給します。つまり、太陽光や風力などの再エネ電力を蓄えて必要な時に供給する「蓄電池」の役割を担うとともに、電力の安定供給をサポートするのが揚水発電なのです。
日本の揚水発電は、2022年時点で全国42地点、合計約2700万kWの発電出力となっています。発電量全体の約1.3%を占め、その規模は世界第2位です。コスト面でまだ課題はあるものの、政府も揚水発電を蓄電池と並ぶ「脱炭素型」の調整力として、維持・強化を進めるとしています。揚水発電は、今後の日本の電力ネットワークに欠かせない電源として大きな期待を集めているのです。
●関東地方近郊の揚水発電所一覧
発電所名 | 水系名 | 出力(kW) |
---|---|---|
新高瀬川 | 信濃川(長野県) | 1,280,000 |
葛野川 | 相模川(山梨県) | 1,200,000 |
玉原 | 利根川(群馬県) | 1,200,000 |
今市 | 利根川(栃木県) | 1,050,000 |
神流川 | 利根川・信濃川(群馬県) | 940,000 |
塩原 | 那珂川(栃木県) | 900,000 |
安曇 | 信濃川(長野県) | 623,000 |
城山※ | 相模川(神奈川県) | 250,000 |
水殿 | 信濃川(長野県) | 245,000 |
矢沢 | 利根川(群馬県) | 160,000 |
・無印発電所の事業所は東京電力 ※は神奈川県企業庁 |
広報紙「MiRaI」Vol.83 2024 夏号 より転載