電気安全に関するQ&A FAQ
カンリちゃん
QUESTION 90

再生可能エネルギーを利用したさまざまな発電の研究開発が進んでいるようですが、「水素発電」というのもあると聞きました。どんなものなのか教えてください。

ANSWER

再生エネ発電は自然界にある資源で発電しますが、水素を製造して発電するのが「水素発電」。火力発電と違い温室効果ガスを発生させず、排出されるのは水だけのクリーンな発電です。

まもるくん
水素タンクイメージ

地球温暖化対策としてカーボンニュートラル実現に向けて、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを利用する発電の導入が進んでいます。太陽光発電がその代表的なものですが、近年、実証実験が進み注目を集めているのが「水素発電」です。

水素発電とは

水素を燃料として発電する水素発電は、排出するのは水だけなので、環境負荷が低い発電方法として注目されています。その発電方式には、「ガスタービン発電」「汽力発電」「燃料電池発電」の3種類があります。

ガスタービン発電は、水素または水素とほかの燃料を燃焼させ、発生したガスでタービンを回転させて発電します。汽力発電は、水素または水素とほかの燃料を燃焼させ、発生した蒸気でタービンを回転させて発電します。燃料電池発電は、水素と酸素を化学反応させて電力を取 り出す方法で、ガスタービン発電や汽力発電より高効率で発電できます。コストの問題で大規模発電には不向きですが、家庭用燃料電池やFCV(燃料電池自動車)ではすでに活用されています。

水素発電のメリット

火力発電は日本の電源構成の7割以上を占めていますが、CO2​の排出が大きな問題となっています。一方、水素発電は水素を天然ガスの火力発電に混ぜたり(混焼)、水素だけを燃料とする火力発電(専焼)を開発することで、発電時にCO2​を排出せず、また、天候などに左右される再生可能エネルギーの発電量を補う調整能力にもなります。

水素は多様な資源から製造できます。石炭や天然ガスなどの化石燃料を改質したり、水を電気分解したりすることで製造でき、再生可能エネルギーを利用して電気分解すれば、製造段階でもCO2​排出量を抑えることができます。さらに、CO2​を回収・貯留・利用する「CCS」「CCUS」技術と組み合わせれば、実質的にCO2​排出ゼロの火力プラントの実現も可能です。また、国内での製造に加え、海外からの資源の調達先の多様化を通じ、エネルギー供給・調達リスクを低減することもできます。

CCS
「発電所や化学工場などから排出されたCO2​を他の気体から分離して回収し、地中深くに圧入・貯留すること
CCUS
分離・貯留したCO2​を利用すること(古い油田に注入し、残った原油を押し出しながら、CO2​を地中に貯留するなど)

水素発電の課題とこれから

現在、水素エネルギーの活用はまだ途上段階にあり、水素製造のコストの高さ、大規模なサプライチェーンがまだ確立していない等の問題も存在します。ですが、国の「水素基本戦略」では水素エネルギーのコストを従来のエネルギーと同程度にする目標が掲げられており、今後ますます研究開発が進むことが期待されています。

【HYDRGEN PARK TAKASAGO】1.水素製造設備(アルカリ水電解装置)2.水素製造設備(SOEC)3.水素貯蔵設備 4.水素発電実証設備(大型ガスタービン)5.水素パーク展示室 高砂水素パーク(兵庫県高砂市)出典:三菱重工業

2023年9月には三菱重工業が「高砂水素パーク」(兵庫県高砂市)の稼働を開始。水素製造から水素発電まで一貫して検証可能な世界初の設備で、早期商用化を目指し大型水素ガスタービン発電施設を運転させています。

広報紙「MiRaI」Vol.89 2026 新年号 より転載