北側の部屋にも日光を取り入れることができる機器があると聞きましたが、どのようなものでしょうか?
「集光装置」を使えば、室内に太陽光を取り入れることができます。

北側の部屋だけでなく、南側に高い建物が建っているため、太陽の光が室内に届かない住宅も少なくありません。プライバシー保護のために窓を取り付けることができないこともあります。そんな場合に、太陽光を集め室内に取り入れる「集光装置」が役に立ちます。これまではシステムが大掛かりだったため、オフィスビルなどの業務用が中心でしたが、小型化・軽量化が進み、マンションや戸建て住宅の新築時に導入する例も増えています。
魅力はなんといっても自然光であること。朝日や夕焼けを感じることができ、生態リズムを整えたり、リラクゼーション効果も大きいと言われています。さらに、太陽光を部屋まで届ける過程で紫外線や赤外線をほとんど取り除くため体に優しく、同時に熱の少ない集光ができるため、夏場にエアコンが効かなくなったり、室内の壁紙やじゅうたん、家具などが色あせすることもありません。

集光装置は、太陽光を集める集光機を屋根などに取り付け、そこから室内に運びます。鏡を利用してダクト内で太陽光を反射させながら運ぶ方法や、光を屈折させて運ぶプリズム方式、集光時に太陽光を濃縮して光ファイバーで運ぶ方法などがありますが、特に光ファイバーは設置が容易で、太陽光をどこにでも運ぶことができます。

自然の光のため、光量が時刻や天候に左右されますが、集光機に刻々と変わる太陽の向きを追尾するシステムがついているものは、より長い時間、安定した光を取り入れることができます。集光装置を使えば消費電力の軽減につながるため、地球環境保護に優れた機器として注目されています。
太陽の光が地下空間や海洋開発を変える

現在、地下空間を住宅など生活基盤として利用するための開発は進んでいません。理由のひとつは、太陽光が当たらないため心理的圧迫感などが強く、長時間の滞在に適さないからです。
しかし、大規模な集光システムが導入できれば、地上と変わらない感覚で生活することも可能で、地底都市の誕生も夢ではありません。太陽光集光システムの地下空間や海洋開発への利用に期待が寄せられています。
また、太陽光が直接届かない深海に、集光システムで太陽光を当てることができれば、光合成する植物プランクトンが増殖し、富栄養化成分を分解して水を浄化します。さらにそれを食べる動物プランクトンが増殖して、食物連鎖が循環し、海を豊かにします。無尽蔵で自然のエネルギーである太陽光の有効利用は、これからどんどん進んでいくでしょう。
広報紙「MiRaI」Vol.12 2006 秋号 より転載