充電器にただ置くだけで充電できるシェーバーを使っていますが、なぜ充電できるのでしょうか?
ワイヤレス充電(非接触充電方式)を使っているからです。いま、いろいろな用途に広がりを見せています。
シェーバーの充電に使われているワイヤレス充電ですが、いま、携帯電話やスマートフォンなどにも広がりを見せています。なぜ、ただ置くだけで充電できるのか、その仕組みを見てみましょう。
「電磁誘導」を利用した充電方式

ワイヤレス充電とは、充電器の上に機器を置くだけで、端子やコネクタなどの金属接点を接続しないで充電できる技術です。電磁誘導方式、電波受信方式、磁界共鳴方式の3つの方式がありますが、現在実用化されているのは「電磁誘導※」を利用したものです。(※19世紀、イギリスの科学者ファラデーが発見。)
電磁誘導は、2つの離れたコイルの一方(送電側)に電流を流すことで磁束を生じさせ、それをもう片方のコイル(受電側)に誘導して充電するという仕組みです。これは、IHヒータなどの仕組みと似ていますが、ワイヤレス充電では電流をコイルで取り出し電力として伝えています。電動歯ブラシなどで使用されているワイヤレス充電では数%だった電力伝送効率が近年50%以上と大きく向上したため、さまざまな用途への可能性が広がったのです。
いろいろな機器にひとつの充電器で対応可能

家にいくつもの充電器があり、置き場に困ったり、ケーブルが絡まったりしていませんか?スマートフォンの充電に悩んでいる人も多いようですが、いつでもどこでも好きな場所で充電でき、しかもひとつの充電器でいろいろな機器の充電を可能にするのがワイヤレス充電です。
現在、「qi(チー)」というワイヤレス給電に関する国際標準規格が存在しており、このマークの付いた充電器とモバイル機器には互換性があるため、専用の充電器でなくても、また異なるメーカーの機器であっても充電することができます。昨年、NTTドコモがスマートフォンに世界で初めて「qi」規格を採用したのを皮切りに世界中で導入が進んでおり、ノートパソコンへの導入も期待されています。
進化するワイヤレス充電

ワイヤレス充電の技術や装置の進化が一気に進んでいます。たとえば、パナソニックが発売した無接点充電パッド「チャージパッド」はqi規格対応で、充電パッド内の送電コイルが充電する機器の受電コイルの位置を自動で検出して移動するムービングコイル方式を採用しているため、パッドの充電エリア内ならどの位置に機器を置いても充電ができ、パッド上に2つの機器を置いても自動で順番に充電してくれます。
こうした充電器の誕生で、充電機能を組み込んだ「ワイヤレス充電家具シリーズ」が登場。カフェやコンビニ、空港などにワイヤレス充電スポットを設置する動きも進んでいます。また、家の壁に電力送信機を埋め込むなどして、部屋の中の家電にワイヤレスで送電するという仕組みも実用化が近づいているといわれます。ワイヤレス充電が私たちの生活スタイルを大きく変えることになるかもしれません。
広報紙「MiRaI」Vol.36 2012 秋号 より転載