地熱エネルギー、地熱発電がこれから有望ということですが、どんなエネルギーで、どのように利用されるのでしょうか?
日本の地熱エネルギーの資源量は世界第3位。発電のほかに多くの用途で利用できることから期待を集めています。


火山帯に位置する日本は、豊富な地熱資源に恵まれています。その資源量は米国、インドネシアに次いで世界第3位、電力に換算して約2300万kWにも達します。
火山や天然の噴気孔、温泉、変質岩などがある地熱地帯では、深さ数kmの比較的浅いところに1000℃前後のマグマだまりがあり、地中に浸透した雨水などがマグマによって加熱されて地熱貯留層を形成することがあります。そこに貯えられた熱を直接エネルギー源として利用するのが地熱発電です。
地熱のメリット
- 発電時のCO2排出量がほぼゼロで環境適合性に優れている
- 化石燃料のように枯渇する心配が無い
- 他の再生可能エネルギーと比べて、設備利用率が格段に高い
- 昼夜を問わず、安定して発電できる
- 発電に使った高温蒸気・熱水を再利用できる
地熱発電は他の再生可能エネルギーと比べて設備利用率(出力に対する発電量)が約70%と高く(風力約20%、太陽光約12%)、安定した電力供給源です。また、発電に使った高温の蒸気や熱水は、農業用ハウスや魚の養殖、地域の暖房、道路の融雪などに再利用できます。地熱開発に伴う効果としては、地元自治体の税収増、雇用効果、地域振興なども期待できます。
地熱発電の課題
- 発電所1ヵ所当りの発電規模が火力、原子力より小さい
- 地熱資源が国立公園内などにあり開発が規制されている
- 発電所開発期間が10年以上と長い
日本の地熱資源のうち、実際に発電に利用しているのは2%に過ぎません。これまで開発が厳しく制限されてきたからですが、2012年3月に環境省が自然公園の規制を緩和して、同7月からは固定価格買取制度が始まったことにより、全国で地熱開発プロジェクトが活発に動き出しました。資源エネルギー庁も2013年度から、地熱発電を生かした地域振興策として発電所から出る熱水を生かした農作物栽培や温浴施設の運営を支援しています。さらに、政府は3~4年かかる環境影響評価の期間を半分に短縮する方針を打ち出すなど、地熱発電促進施策を拡大しています。
可能性を広げる発電方式
地熱発電の方式は、地下の地熱水を蒸気と熱水に分け、高温の蒸気だけをタービンの動力に利用する〈蒸気発電方式〉のほかに、温泉などの80~150℃の中高温熱水を有効利用する〈バイナリー方式〉があります。この方式は〈温泉発電〉ともいわれ、既存の源泉をそのまま活用できるため、低コスト・短期間で運転を開始できることから注目されています。
最近では、水分に乏しく十分な熱水・蒸気が得られないような高温の岩盤に割れ目を作り、水を注入して高温蒸気を取り出し発電する〈EGS(高温岩体地熱発電)〉という方式の研究も進んでいます。発電効率が高くなり将来的には日本の総発電量の50%以上を賄うことも可能になるともいわれ、すでに欧米では2020年代の実用化に向けて実証プロジェクトが始まっています。
広報紙「MiRaI」Vol.45 2015 新年号 より転載