宇宙太陽光発電というのがあると聞きました。いったいどんなものなのでしょうか?
宇宙に太陽電池パネルを浮かべて発電し、マイクロ波やレーザー光に換えて無線で地球に送電するというものです。
2014年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」や内閣の宇宙開発戦略本部が決定した「宇宙基本計画」にも、2030年代の実用化を目指し「宇宙太陽光発電システム(SSPS=Space Solar Power Systems)」の開発が盛り込まれており、将来のエネルギー源として大きな期待を集めています。
宇宙太陽光発電(SSPS)とは
宇宙太陽光発電システム(SSPS)は、宇宙空間に太陽電池パネルを広げて発電し、マイクロ波やレーザー光などに変換して無線で地球上の受電施設に送り、電気を取り出すというものです。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の試算では、地上約36,000kmの宇宙空間に直径2~3kmにわたって太陽電池パネルを広げて発電すれば、原子力発電1基相当(100万kW)が発電できるとされます。
日本がリードするSSPS
SSPSの歴史は、1968年にアメリカのピーター・グレイザー博士が宇宙空間に大型の太陽電池パネルを設置して発電し、マイクロ波に変換して地上に伝送する仕組みを発案したことに始まり、NASAと米国エネルギー省により開発が進められましたが、レーガン政権下で財政難を理由に計画は縮小されました。
日本では、1980年代から研究が始まり、2010年に京都大学に世界最大のエネルギー伝送実験施設がつくられ、11年からは京都大学・JAXA・三菱電機などが共同で研究を本格化しました。宇宙から地上にある受電施設に正確にマイクロ波を伝送するのは針の穴に糸を通すようなものですが、この技術は日本が最も進んでいるといわれており、今年3月にマイクロ波で電気を無線で飛ばす実験に成功し、実用化にまた1歩近づきました。
2020年代には、小型の衛星を打ち上げて、宇宙空間の実証実験を開始する予定とされています。
SSPSのメリット
- 昼夜や天候に影響されず24時間発電ができるため、宇宙空間では地上に比べて約10倍の太陽エネルギーが利用でき、安定的・効率的なエネルギー供給が可能になるといわれています。
- 太陽光は石油のように枯渇の心配もなく、CO2を排出しないため、地球温暖化対策にも有効です。
SSPSの課題
- 宇宙からの伝送方式として、マイクロ波に変換してビームとして地上に送る方法が有力とされていますが、強力なマイクロ波は人体や環境に悪影響を及ぼす恐れがあり、伝送する際の精度を上げる必要があるほか、電力とマイクロ波の変換効率を高めることも必要とされています。
- 高いコストも課題で、1.5~2兆円ともいわれる設置コストを削減するための技術革新が求められています。しかし、マイクロ波の伝送技術は、洋上風力発電の送電や、電気自動車への無線充電など、他の用途への応用も期待されています。
広報紙「MiRaI」Vol.47 2015 夏号 より転載