クルマの自動運転が大きな話題になっていますが、どんな仕組みでできるのか、本当に実現するのか教えてください。
カメラやレーダーなどを搭載し、アクセルやブレーキ、ステアリングを自動的に制御します。将来的には、完全自動走行が可能になるでしょう。
自動運転というと、人が運転操作しなくても勝手に走る車を想像する人もいるでしょう。これは「完全自動運転」で、残念ながらまだ実用化はしていません。しかしこの8月、自動運転技術を搭載した車が日本で初めて発売されました。各社で開発を加速しており、もはや自動運転は実現段階に入っています。
予防安全、運転負担軽減から完全自動運転へ

現在は、自動車に搭載されたカメラやレーダーなどの車載センサで障害物を認識し、衝突の可能性がある場合に自動でブレーキをかける技術や、先行車両との距離を認識して適切な車問距離を保つように自動で制御する技術など、予防安全システムや運転負荷軽減システムと呼ばれる安全運転支援の自動運転技術が実用化されています。
日産自動車が8月に発売した「セレナ」には、同一車線自動運転システムが搭載され、高速道路の単一車線での自動運転が可能になります。日産では2018年には高速道路での車線変更を自動的に行う複数レーンでの自動運転技術、2020年までに一般道での自動運転技術の投入を予定しており、メーカー各社も開発を加速しています。
自動化のレベルによって4段階に分かれる自動運転
自動運転車にはカメラやレーダーなどのセンサ、衛星利用測位システム(GPS)や人工知能(Ai)が重要な役割を果たします。また、データ通信のための高度な通信技術も必要になります。これらによりどの程度運転が自動化されているかを、日本では4段階のレベルに分けています。
すでに実用化されている「衝突被害軽減プレーキ」や高速道路などで前車を追従する「ACC(アダプティプ・クルーズ・コントロール)」などは〈レベル1〉、そして現在〈レベル2〉の実用化が始まっています。
レベル1 | 加速・操舵・制動のいすれかをシステムが行う状態 | 安全運転支援システム | |
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レベル2 | 加速・操舵・制動のうち複数の操作をシステムが行う状態 | 準自動走行システム | 自動走行システム |
レベル3 | 加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときはドライバーが対応する状態 | ||
レベル4 | 加速・操舵・制動を全てドライバー以外が行い、ドライバーが全く関与しない状態 | 完全自動走行システム |
出典:内閣府「SIP(戦略的イノペーション創造プログラム)自動走行システム研究開発計画」
自動運転が社会課題を解決する
自動運転が実現することにより、次のような効果があると考えられています。
- 1)交通事故の削減
- 2)交通渋滞の緩和
- 3)環境負荷の低減
- 4)運転の快適性の向上
- 5)高齢者を含めた移動のための支援

自動運転の高度なシステムにより安全性が向上し、ヒューマンエラーや情報不足などが原因の交通事故を低減することができます。また、自動運転によって高密度で高効率な追随走行が可能となり、交通が円滑化され渋滞の解消や緩和が期待できます。不要な加減速も減り、燃費の向上やCO2の削減効果により環境負荷も低減できるでしょう。
このほか、運転負荷の軽減によりドライバーの疲労やストレスが減り、運転の快適性が高まり、さらにドライバーの代わりにシステムが車両を操作することで高齢者などの移動を支援することも可能になります。
広報紙「MiRaI」Vol.52 2016 秋号 より転載